あっせん代理
あっせん代理

事業主と労働者との間の労働条件やその他の労働関係に関する事項についての紛争を「個別労働紛争」と言います。この「個別労働紛争」の迅速な解決を促進するため、平成13年10月1日に「個別労働紛争解決促進法」が施行され、各都道府県の労働局長は、個別労働紛争を未然に防止するための情報提供や相談に加え、助言・指導、さらに紛争調整委員会によるあっせん等の紛争解決援助を行っています。

職場での労使間のトラブル、問題社員の対応・解決はあっせん代理人にご相談下さい。弊事務所では経営者側の立場で過去の労働判例を参考に、専門家による有利な解決を目指します。

あっせんの対象となる紛争

・解雇、配置転換、出向、雇止め、労働条件の不利益変更等の労働条件に関する紛争
・セクシャルハラスメントに関する紛争 など

あっせんの対象とならない紛争

・労働組合と事業主間の紛争
・労働者間の紛争
・裁判で係争中である、または確定判決が出されている等既に他の制度で取扱済みの紛争 など
・あっせん制度

紛争調整委員会によるあっせん制度は、紛争当事者間に第三者(紛争委員会の委員)が入り、双方の主張の要点を確かめ、双方に働きかけ、場合によっては両者が採るべき具体的なあっせん案を提示するなど、紛争当事者間の話し合いを促進することにより、その自主的な解決を促進する制度です。

平成15年4月1日より社会保険労務士法が改正され、社会保険労務士が事業主、または労働者の代理人となることができるようになりました。

あっせんのメリット・デメリット

メリット

・裁判より簡単・迅速である
・あっせん費用は無料である
・非公開であり、プライバシーが守られる
・あっせん案に合意した場合は、民法上の和解の効力を持つ

デメリット

・あっせん案に応ずるか否かは自由である
・あっせんに応じるか否かも自由であり、相手側が話し合いに応じないこともあり得る


あっせんの事例 

事例1 普通解雇(普通解雇をめぐり和解金の支払を求めた事例)

 

【申請の概要】

申請人は、菓子製造業を行う事業場において、経理を担当する事務員として8年弱の間勤務していたが、上司及び他の従業員とのコミュニケーションが図れず職場に適しないという理由で30日前に予告を受けたのち、9月20日何で解雇された。申請人は、本件解雇は社長や専務の恣意的な感情による不当なものであるとして、1年間分の生活費相当額の補償金の支払を求めてあっせんの申請を行ったもの。

【紛争当事者の主張】

○申請人(労働者)
私は仕事でミスした訳でもなく、社長や専務の恣意的感情により、解雇されたことに納得がいかない。私には重病の母がおり、看病もしているが、辞めるとすぐには仕事が見つからず、生活が苦しいことなどを訴えても、社長からは「そんなことは知ったことではない」などと言われた。
私は、解雇の理由にもならないことで辞めさせられたことに、精神的に大きな傷を負った。社長や専務に対して慰謝料を請求したい思いで、今回のあっせん申請を決意した。
私が勤務していた8年弱の間に、10人はどの社員が解雇されたが、すべて恣意的な感情から理由もなく即時解雇されたものである。
会社側の主張する解雇理由は、上司及び他の従業員とのコミュニケーションが図れないというものであるが、事実無根であり到底納得できない。
本来であれば解雇撤回を求めて争うところであるが、このような仕打ちを行う会社への復帰は考えていない。求める補償金額は1年間分の生活費相当額であるが金額にそれはどこだわるつもりはなく、その半分でもいいと思っている。金額の問題以上に社長に自分の非を認めて謝ってほしい。

○被申請人(事業主)
申請人は他の従業員との協調性がなく、上司に対しても反抗的な態度をとるなど職場環境を悪化させる大きな要因となっており、性格がきつく来客からの評判も悪かったこと等から解雇した。会社に悪い影響を及ばすものであることから解雇したまでであり、落ち度はないと考えている。金銭を支払う気もないし謝罪する気もない。

【あっせんの内容】

あっせん期日において、あっせん委員が個別に紛争当事者双方と面談の上、主張の聴取を行った。被申請人は、当初、申請人に対する謝罪はもちろん金銭の支払には応じられない旨強硬に主張していたが、あっせん委員が、裁判例等例示しながら正当な理由のない解雇は権利の濫用に当たると判断される場合が多いこと等を説明、譲歩を求めたところ、金銭の支払には応じる旨主張を軟化させた。
その後は、和解金額等について紛争当事者双方の主張の調整を行った。 被申請人は、「申請人に対して賃金1か月分相当額及び昨年の12月に支払ったボーナスの2分の1相当額の合計額(41万円)を和解金として支払う。申請人に対する謝罪は行わない」旨申し立てた。
申請人に被申請人の意向を伝えたところ、最低限賃金3か月分相当額程度(約77万円)は支払ってほしいと申し立てた。
あっせん委員は、被申請人に、「本件の場合、紛争の経緯から賃金3か月分相当額の請求は妥当だと考えられる」と説明を行った。
これに対して被申請人は、「和解金として50万円を支払う。これ以上の増額については対応できない」旨申し立てた。
申請人に、被申請人の主張内容を伝えるとともに譲歩を促したところ、被申請人は「50万円の和解金の支払で同意すると申し立てた。

【結果】

被申請人が申請人に対して、和解金として50万円を支払うことで、紛争当事者双方の合意が成立した。また、その旨を記載した合意文書の作成が行われた。

 

 

 

事例2 普通解雇(派遣先のトラブルを理由とする解雇をめぐるあっせん事例)

 

【申請の概要】

卸売業A社に正社員として勤務している労働者×は、取引先であるB百貨店のC支店に販売員として派遣され勤務していた。しかし、派遣先での人間関係がうま<いかず、同僚に対するいじめも行ったとして、A社の社長から、派遣の打切りと1か用後の解雇通告を受けた。
×は、解雇は一方的であり、理由も不当であるとして、解雇の撤回を求めたが、A社から拒否されたため、紛争に発展し、不満に思った×があっせんを申請したもの。

【紛争の背景】

労働者]は、A社に昭和○○年に採用された。これまでの勤務態度は良好で、販売成績についても常にトップクラスであった。
A社は、過去のXの勤務態度等からもいじめをするとは考えられなかったが、A社は事実関係を調査していなかった。
今回の派遣の打切りは、取引先である]の派遣先の百貨店の意向であるので、事業主としても応じざるを得なかったもの。
]の別店舗等への異動も社内で検討したが、他に欠員が出る予定もなく、売場の採算性から考えても、新たな枠を確保することは困難であり、内勤についても同様の理由で断念した。

【紛争当事者の主張】

○申請人(労働者)
いじめを行った事実は無く、解雇を撤回してもらい、別の支店で働きたい。これが無理であれば、退職金とは別に補償として6か月分の賃金相当額の支払を求めたい。

○被申請人(事業主)
解雇の撤回はできないので、金銭補償による解決を求める。補償金として、4か月分の賃金相当額ならば支払に応じる旨の申出を行った。

【あっせんの内容】

あっせん委員が当事者双方に個別面談しそれぞれの主張を確認するとともに、解決に向けての意向を確認したところ、申請人Xは、解雇は受け入れるが、会社に誠意ある対応を求めているのに対し、A社は取引先の都合でやむを得ずXを解雇をしたもので、会社の実情からも、補償は4か月分が限度だと主張した。
あっせん委員は、双方に対しあっせんによる紛争解決の意思があるかどうかを再確認するとともに、当事者双方にさらなる譲歩を求め、補償金の調整を行った。
(申請人Xの再度の主張)
支払の月数を減らすのなら、基本給だけでなく、職能給等も含めてほしい。
(被申請人A社の再度の主張)
会社の支払能力等を勘案し、125万円(基本給の5か月分程度)で解決したい。
再度、あっせん委員から、申請人Xに譲歩の余地を確認したうえであっせん案を提示した。
○ あっせん案
Aは]に対して、補償金として金125万円を支払うこと。

【結果】

当事者双方とも、あっせん案を受諾した。

 

 

 

事例3 普通解雇(解雇理由に納得できず慰謝料の支払いを求めたあっせん事例)

 

【申請の概要】

A会社に正社員として採用された労働者Xは、入社3ヶ月後に、能力不足を理由に解雇を言い渡された。解雇理由に納得がいかないため、解雇の撤回を求めたが、聞き入れられなかった。
当該解雇は不当であるとして、不満に思った労働者Xがあっせんを申請したもの。

【紛争の背景】

労働者Xは、平成○年○月に新規採用された。身分は正社員、勤務時間は9時30分から5時45分まで、賃金は月給制で18万円ということであった。(ただし、労働条件については口頭で伝えられ、就業規則も示されなかった)
入社日は、4月1日。初日はセレモニーと簡単な研修の後、前任者からの引継ぎを受けた。2日目は、専務の業務説明の後、課長の指示を受けながら、事務を始めた。業務研修らしいものもなかったが、業務は滞らせなかった。また、残業も積極的にこなした。最初の給料支給日、残業手当の額に納得がいかなかったことから、課長に残業手当の額等について質問したところ、「一人前になってから言うことだ。まったく生意気だ」と言われた。納得いかないので経理課に相談したところ、経理担当者から、「支給されるだけましだ」と言われた。
その後、人間関係に多少ギクシャクしたところはあったが、業務は滞りなく遂行していた。しかし、入社後3ヶ月たったころ、専務から1ヶ月後の解雇通告を受けた。解雇理由は「当社の仕事に必要な能力がない。人間関係がうまく築けない」ということだった。業務上の問題点は見当たらず、納得ができないので「残業手当のことが理由ですか」と問いただしたが、「違う。業務上のスキルだ」と言われた。

【紛争当事者の主張】

○申請人(労働者)
解雇理由に納得がいかない。不当解雇と思われるので、精神的苦痛に対する補償と自分の経歴に解雇の記録が残ることで今後の就職活動にも支障がでると思われるため、慰謝料として50万円の要求を行う。
○被申請人(事業主)
解雇の決定については、社長以下会社幹部による会議で決定した。理由は、Xの業営業窓口であり、迅速な対応と協調性が求められるポストであるが、Xはわがままで協調性がないなど、全く営業窓口としての適用性がない。そのため、社内の評判も悪く、顧客からもクレームが出ている。金銭解決応じるつもりはない。

【あっせんの内容】

あっせん委員が当事者双方に個別面談し、主張を確認したが双方とも自らの主張に固執し続けたため、それぞれに以下の問題点を指摘し、譲歩を促した。

申請人X
中小企業においては、協調性がないことは本人の能力の有無にかかわらず、解雇理由になるという判例があるということ。
非申請人A社
解雇手続きについては、法律上の問題点は見受けられないが、労務管理上若干の問題点があること。そもそも、このような紛争が生じたきっかけは、最初に賃金等の労働条件が書面で明示されていないことにあること。
あっせん委員は、再度、双方に紛争解決の意思があるかどうかを確認するとともに、解決金について双方の譲歩を求めた。

【結果】

「A社はXに対して、解決金として金20万円を支払う」との和解案に当事者双方とも納得し、合意文書がとり交わされた。

 

 

 

事例4 整理解雇(リストラによる解雇に対し退職金等の上乗せを求めたあっせん事例)

 

【申請の概要】

申請人A及びBは、食品加工業を営む事業場に6年間、パートタイムの加工作業員として勤務していたが、業績の悪化を理由に30日前に予告を受けたのち、整理解雇された。復職を希望しているものではないが、長年働いていた会社を退職せざるを得な<なったことに対する経済的・精神的損害の補償として、退職金規程に定める退職金に加え、Aはさらに規程上の退職金100%相当額(88万円)の上乗せを、Bは賃金3か月分相当額(56万円)の上乗せを求め、あっせんの申請を行ったもの。

【紛争当事者の主張】

○申請人(労働者)
退職金規程に基づく退職金が支払われるほか、慰労の意味も込め賃金1か月分相当額(18〜19万円)を支払う旨会社から提案されているが、経済的にも大変苦しく納得できない。
会社は経費節減といいながら実用性のない機械導入に多額の出費をしており、それらのしわ寄せをこうした形で労働者に押しつけるのには容認できなしい。当初、職場復帰を求めていたが会社側はこれを認めようとせず、和解金についても賃金1か月分相当額以上は出せない旨主張し譲ろうとしない。
退職金規程に定める退職金に加え、Aについては規程上の退職金100%相当額を、Bについては賃金3か月分相当額を、それぞれ慰労金として支払ってはしい。

○被申請人(事業主)
仕事量の減少による業績悪化のため人員削減はどうしても必要であり、申請人らを含む3人の加工作業員をやむを得ず解雇した。解雇対象者については、作業能率の評価・会社貢献度の低い者から順に選定を行った。事実関係については、申請人の主張どおりであり間違いない。
申請人らには規程の退職金に加え、それぞれ賃金1か月分相当額の和解金を支払うことを提案しているが応じようとしない。
今回の整理解雇については、顧問弁護士にも相談し慎重な検討を行った上で実施した。判例上の整理解雇4要件も承知しており、クリアしていると考えている。
本件については、当社としても早期の解決を図りたいと考えている。

【あっせんの内容】

あっせん期日において、あっせん委員が紛争当事者双方と個別に面談したところ、双方とも仕事量の激減による人員整理で解雇が行われたという事実については争うつもりはなく、和解金額についても一定の限度で譲歩する意向を示したことから、具体的な支払額についての歩み寄りを促した。
なお、申請人AおよびBについては、解雇に至るまでの経緯、希望している和解金額の算定根拠等について若干事情が異なるものの、同時期に整理解雇の対象とされ、事業主との交渉、あっせんの申請等を共に行っていることもあり、申請人二人に対し同時に主張の確認を行った。

【結果】

被申請人が、申請人に対して、退職金規程に定める退職金に、和解金として賃金3か月分相当額(Aについては58万円、Bについては56万円)を上積みした上で、2か月後までに支払うことで、双方の合意が成立した。
また、両者は、その旨を記載した合意文書を作成した。

 

 

 

事例5 整理解雇(経営悪化を理由とする解雇に対し和解金の支払いを求めた事例)

 

【申請の概要】

申請人(3人)は、被申請人A株式会社(自動車部品製造業)に勤務し、製造作業に従事していたが、極端な受注減による経営悪化を理由に、11月22日に、同月28日付で法定の解雇予告手当の支払とともに解雇を通告された。いったん解雇された以上、復職の意思はないものの、突然の解雇により経済的に大変苦しい状態であり、また、解雇の仕方についても納得のいかない点があるとして、賃金2か月分相当額の和解金の支払をA社に求め、あっせんを申請したもの。

【紛争当事者の主張】

○申請人(労働者)
経営悪化を理由に、突然、解雇通告された。いったん通告された以上、会社にとどまるつもりはないが、突然の解雇で経済的に大変苦しい状態に追い込まれており、また、@事前になんら協議等ないまま一方的かつ突然解雇されたA派遣労働者、パート労働者に先んじて正社員である自分たちが解雇されたBボーナス支払いの直前に解雇され当然受けられるべき金銭的利益が受けられなかったこと等解雇の手続きについて納得できない点が多々ある。これを補償してもらうべく和解金として賃金2か月分相当額の支払を求めたが、拒否された。
○被申請人(事業主)
利益率が低下している中で、今後において受注増も見込めにくいことから、11月中ごろには、11月28日付での会社解散も視野に入れ、発注元に相談した。発注元からは解散を思いとどまるよう説得されたため、11月28日付けで5名を解雇することとして、会社解散は見送った。
このため、11月22日に申請人(3名)を集め、11月28日付けの解雇予告を行った。
時間給ではあるが再雇用の話もしたが、応じる者はいなかった。
受注量の激減により業績が急激に悪化している。労働者を解雇しなければ、会社を解散せざるを得ないところまでひっ迫した状況の下で、やむを得ないの措置であった。
解雇にあたって従業員の@能力A協調性、等を基準にし、あわせて、以前発注元に出向していた2人については再度出向してもらいたいと考え打診したが、賃金面で折り合いがつかず、やむなく解雇した。
解雇に際しては、法定の解雇予告手当、退職金規定に基づく退職金を合わせて1人当たり120万円から200万円を支払っている。業績回復の見込みも立っていない中、残った従業員の賃金カットも決定したところである。申請人の請求もわかるが、資金に余剰がなく、借り入れもできない状態で、請求に応えることは難しい。
申請人の賃金2か月相当額上積みの根拠がわからないが、希望どおり支払うとなると合計180万円程度必要になってしまう。
会社として、支払えるものなら支払ってあげたいが、工場や設備も発注元のものを借用しての操業で売り上げに頼る以外になく、その売り上げも見込みがたっていないことや、残った従業員の賃金支払いのことを考えると支払うとの返事ができない。

【あっせんの内容】

申請人は複数(3名)であったが、あっせんを求める事項について同一内容であったことから、同日にあっせん期日を設定した上で、3名の申請人及び被申請人である事業主と個別に面談の上あっせんを実施した。あっせん委員が、「申請人の主張するように解雇の方法に全く問題がないとはいえない。申請人の主張する額面どおりとまではいかなくとも、可能な範囲において対応を行えないか」として被申請人に対して和解金の支払を促す一方、「あっせんは双方の譲歩により成立するもの。会社の逼迫した状況をかんがみると当初の要求額に固執すべきではないのでは・・・」として申請人に対しては金額についての譲歩を求めた。【結果】
被申請人が「申請人3名に対し合わせて75万円の範囲であれば支払が可能である」旨主張し、これを受け、申請人も要求額を下限25万円とした上で賃金1か月分相当額に引き下げた。
被申請人が支払限度とした75万円におさまるような配分をした上で「被申請人が、申請人に対して(申請人一人当たり)支払済みの解雇予告手当相当額の2分の1に相当する金額に一律5万円を加算した額を和解金として支払う」という解決案に紛争当事者全員同意したことから、これを内容とするあっせん案を提示したところ、申請人3名全員を含め紛争当事者双方がこれを受諾し合意が成立した。

 

お問合せ
伊藤社労士事務所
叶l事労務コンサルティング
〒420-0805
静岡県静岡市葵区城北17-3
TEL:054-260-9078
FAX:054-260-9079